医師の選択が治療の成否を決める
「医師の選択が治療の成否を決める」
うつ病など精神疾患の治療では、「最初の治療段階でどのような医師の治療を受けるかで治療の成否が決まる」と言っても過言ではありません。
つまり、「医者選び」が非常に重要であるということです。「医者選び」の重要性は、他の病気についても言えることですが、精神疾患の治療に関しては特にその重要度が高いといえます。
何故ならば、精神疾患の治療では患者さんが病気になった原因、経過、病状など実に様々であり、その為医師には「患者さんの生活背景などを探り、病状をきちんと正確に診断し、患者さん個々の病状に合わせたきめの細かい治療(薬物治療、精神療法など)がより強く求められる」からです。
医師として豊富な臨床経験、正確な薬物についての知識と処方経験、そして何よりも患者さんのデリケートな病状に謙虚に、真摯に対応していく医師としての人格、品性を備えていることが必要なのです。
良い医師にめぐり合えば、ほとんどのうつ病患者さん(重症うつ病のレベルは除きます)は早く回復し、治ります。しかし、不適切な医師の治療では、ぐずぐずと長期にわたって薬を飲み続け、いつまでたっても治らずに一生「薬漬け」となってしまう危険性があるのです。
このような医師のセリフは「あなたは治療のために一生薬を飲む必要があります」というものです。
重度のうつ病患者さんの場合、外来治療は出来ませんので入院治療によって、長期に薬物治療を続けなければならない場合がありますので、この点は誤解のないようにしてください。
現在の精神医療の現場で大きな問題になっている「向精神薬の多剤・大量処方」について、その原因は患者側に問題がある場合もありますが、ほとんどの場合は薬を処方する医師側に問題があります。
これまで何度も述べてきましたが、向精神薬は安易に、簡単に処方するような薬では決してないのです。患者さん個々の病状、特性などを十分に考慮して、細心の注意を払って、慎重に処方すべき性質の薬なのです。
多剤・大量処方の現象は、「安易な診断」、「安易な薬の処方」、「安易な治療」しか出来ない「不適切な医師」がまかり通っている現在の精神医療の実態を如実に表しているといえるのです。
患者さんが初診の段階で「良い医師」を選ぶことは、いろいろなタイプの医師がいる中でなかなか難しいと思われます。そこで、治療を敬遠したほうが良い、医者を変えたほうが良い、という「不適切な医師」について述べていきますので、「医者選び」の参考にしていただければ幸いです。
「それではどのような医師が不適切なのでしょうか?」
1) 患者さんの話をきちんと聞いてくれない。
患者さんの話にあまり耳を傾けないで、一方的に自分の見解や指示を伝えるだけの医師や、治療計画や病状の見通しなどについて尋ねてもあいまいにしてきちんと答えてくれない医師。
2) 薬についてきちんと説明をしない。
処方した薬についてきちんと説明をしない。説明をしても副作用などについてはあいまいにして,なるべく触れないようにしている医師。
3) 多くの治療薬を処方する。
基本的に薬物治療は単剤投与ですが、特に理由や説明もなく初めから2種類以上処方する医師や、調子が悪いと報告するたびに説明もなく薬の量や種類を増やす医師は、多剤・大量投与についての危険性の認識が低い可能性があります。
病状によっては、2種類以上処方される場合がありますが、普通はきちんと説明するか、患者の疑問に答えることができます。
4) ずっと長い間薬を変えない。
治療薬の処方は、病状の経過に合わせた調整が必要です。病状が思わしくないのに同じ処方を長期間にわたって続けることは、回復の可能性を低下させていると言わざるを得ません。
薬の変更を避ける明確な説明をしてもらえない場合は、セカンドオピニオンで他の医療機関に相談することをすすめます。
5) セカンドオピニオンを認めない。
診断や治療方法について、主治医以外の専門家の意見を求めるセカンドオピニオンを申し出たとき、所見などの情報をなかなか提供してくれない医師や医療機関は、「患者さんの当然の権利」を奪っているのです。
そのような場合は、他の医師や医療機関へ変えることをすすめます。
6) 減薬、断薬についてきちんと指導できない。
薬物治療で最も重要なことは、患者さんの病状に応じて適切に薬を出すことは当然ですが、病状の推移を見極めながら減薬、断薬を行っていくことです。
現在の精神医療の現場で、ただ薬を処方し、増やしていく医師は沢山いますが、患者さんの病状の推移を見極めながら、きちんと適切に減薬、断薬を指導できる医師は本当に少ないのです。希少価値といっても過言ではないと思います。
7) 薬を出すだけで、患者の相談に乗る、生活指導などに無頓着である。
患者さんの症状のみに関心があり、患者さんの日常生活の状態を知ろうともしないで、ただ薬のみを出すだけの医師。治療を継続して行くうえでの様々な悩みや疑問、生活指導などについて、きちんと相談に乗り、対応してくれないと、患者さんや家族は途方に暮れて孤立感を深めてしまいます。